ウイルスセキュリティZERO
今回はSOURCENEXTから発売されている『ウイルスセキュリティZERO』の使用感をお伝えしていきます。『ウイルスセキュリティ』には有効期限が1年間のものとは別に、更新料が不要な「ZERO」があり、今回の記事はパターンファイルやアップデートが2017年4月まで更新料なしに使える『ウイルスセキュリティZERO』を10カ月ほど使い続けてみた結果のレポートです。なお、このソフトウェアを開発しているのはインドのK7Computing社でした。
インストール
本製品はCD-ROMをPCにセットするだけで自動的にセットアップが出来るというのを売りにしている。そのため「Norton AntiVirus 2003」および「Zone Alarm(無料版)」がインストールされている状態でCD-ROMを入れて自動実行してみた。もちろん説明書には、ほかのセキュリティソフトが入っている場合にはあらかじめアンインストールしてほしいとの記述はあるが、あえて無視して試してみたわけだ。
まずは「Norton AntiVirus 2003」のアンインストールが始まったのだが、なぜか妙なエラーが発生した。まったく関係のないMicrosoftのゲーム「Age of Empires III」のタイトルが出てエラーメッセージが出たのだから。むろん、いうまでもなくゲームを起動したりはしていない。本製品の不具合ではなくNortonのアンインストーラー側の問題ではあるが、これには正直いって戸惑わされた。再起動後に自動的にまたセットアッププログラムが起動し、今度は「Zone Alarm」のアンインストールとなり、こちらは特に問題もなく普通にアンインストールが完了して再起動し、無事インストールの準備が整った。本製品のインストール後にも再起動が必要となるのはWindowsのシステム上仕方がないことだが、再起動の多さは困ったものだ。
インストールが完了して再起動すると、ユーザー名とメールアドレス、パスワード、シリアル番号の入力を求められるので、すべて記入していくことになる。パスワードはサポートなどで必要となるから忘れないように気をつけよう。入力して設定が完了すると、なぜかまた再起動が要求される。なぜこの段階で再起動が必要となるのかは謎だ。
なお、「Norton AntiVirus」のアンインストールは自動ではすべてを消せていない。きっちりと削除したい場合には、コントロールパネルのプログラムの追加と削除から、「Live Reg」「Live Update」「Norton WMI Update」を削除する必要がある。本製品の競合製品の自動削除は中途半端なアンインストールをするという印象だ。
それから、Windows XP SP2の内蔵ファイアウォールを無効にせずに本製品のファイアウォールが有効になり競合してしまった。これはトラブルの元なのでインストール時に無効にしてもらいたいのだが……。「Zone Alarm」など他社製品のファイアウォールが入ってない環境へのインストールならばこの問題はないのかもしれないが未確認だ。本製品のファイアウォールだが、デフォルト設定だとLANからのアクセスを遮断するようになっているので、LAN内でファイルを共有したい人は設定の変更が必要となる。少々不親切のような気がするかな。インストール時にLAN内でファイルを共有するか問い合わせて設定するようには作れなかったのだろうか?
使用感
ウイルス対策・システム防御面
ほかのウイルス対策ソフトと同様に、ウイルスの検出は自動で行なわれる。もちろん手動で検索するすることもできるのは言うまでもない。パターンファイルの更新も自動で行なわれるので、ユーザーは特に本製品を意識する必要なくPCを使うことが可能だ。ただ、更新時には画面右下に数秒間ほど更新が行なわれた旨を伝えるWindowがポップアップする。これはかなり困る仕様だ。アプリケーション上で文字を入力していた場合などは、ポップアップしたWindowにフォーカスが移ってしまい文字を再入力させられることとなるだろう。本気で迷惑だと感じさせられる。ポップアップすること自体は構わないが、それをアクティブ化してしまうのはいただけない。なお、設定でポップアップしないようにする設定は見当たらないので、困った仕様で使わなければならなくなっている。Windowsを再起動しないといけないようなアップデートの時には、定期的に再起動を促すポップアップが出るので、動画のエンコード中などの再起動ができない状態だとかなりうざい。
それと本製品は競合他社製品と比べてウイルス検出率が悪いような感じだ。そのため、アヤシいと思ったファイルは本製品でスキャンするだけでなく、オンラインスキャン(Kaspersky,Symantec,McAfeeなど)も併用して調べるようにするべきだろう。ウイルス対策ソフトをインストールしているからといって、安心しきってはいけないということだ。
ユーザーとして不安となるのは、よくエラーが出て落ちるということ。MMORPGの『トリックスター』を起動すると、nProtectが実行されるタイミングで「K7SysMon Module」がエラー終了してしまうことが多い。相性が悪いといわれればそれまでかもしれないが、ほかのアプリケーションにあっさり落とされるようではセキュリティ面で不安だ。もしもウイルスに落とされてしまったら、システムを守れないことは明白だろう。今後のアップデートで堅牢さが向上することを祈るばかりだ。もし、エラー終了した場合にはPCを再起動いなければならない。でないと、セキュリティ的に危険に晒されてしまうからだ。「Norton AntiVirus」ではそのようなことはなかったから、このあたりは安かろう悪かろうといったところか。安価な製品を使うからには、ユーザー側は運用面でカバーしなければならないという感じだね。
ほかにも、この製品は表示が紛らわしいという点が気になる。使っているPCにはウイルスがなくても、新しいパターンファイルで対応したウイルス情報をポップアップ表示して「メールの添付ファイルから×××が見つかりました。ご安心ください。対策済みです」というような感染していたから対策したかのように受け止められるメッセージを表示することがあった。自分はAjaxを利用したWebベースのメールサービスであるGmailを使っていて、本製品をインストールしたPCにはそもそもローカルにメールの添付ファイルなど存在しないのだが……。意図的に誤解させて不安を煽っているのだろうか。それとも翻訳を現地でやっていて日本語が変なだけ(流行っているという注意喚起のつもりでの記述)なのか気になるところだ。
Scriptが実行されそうになると警告画面を表示してくれるので、システム面の防御は本製品をインストールしておけば大丈夫だと思う。ブラウザのスタートページを書き替えようとするソフトウェアがあっても、ユーザーに確認を促してくれるのもありがたい。ただし、「K7SysMon Module」がエラー終了している場合はこれらの機能が無効となっているので注意が必要だ。
ネットワーク面
初期状態ではLAN内のほかのPCからは本製品をインストールしたPCを参照することができない。ほかのPCから参照したい場合には、設定画面を呼び出して不正侵入を防ぐを選んで設定ボタンを押して設定を変更する必要がある。ローカルLAN設定(LANはLocal Area Networkの略だからおかしな表記だ)のネットワーク通信設定が中になっているので、それを低にすればLAN内のファイル共有への対応が完了する。
ネットワークを利用するアプリケーションが見つかるたびに通信許可を与えるか聞いてくるので、それに答えていけばよい。数日も使えばIDSの設定は完了していることだろう。ただし、ネットワーク対応のゲームをプレイする際には注意したほうがよい点がある。通知領域のウイルスセキュリティのアイコンをダブルクリックするか、スタートメニューからウイルスセキュリティの設定を選んで設定画面を開き、「不正侵入を防ぐ」の右下にある設定ボタンを押して、「アプリケーション」タブにある追加を押してゲームのプログラムを追加し、「インターネットにアクセスさせる」にしておこう。さもないと、フルスクリーンで起動するようなゲームでは、インターネットへの接続許可を問い合わせるWindowが表示されず、ゲームが先に進まずフリーズしたかのように感じるケースがあるためだ。
なお、執筆時(2007/10/25)の本製品はネットワークまわりの動作がかなりおかしいことが判明している。設定で通信許可を与え、全て通すようにしておいても『Age of Empires III』のデータが遮断されて対戦プレイができなかったし、『Windows Live Messenger』の音声通話は、こちら側からの音声が遮断されて片通話となり会話ができなかった。これらの問題は将来的には直るのかもしれないが、現状ではセキュリティを無効にしないと使えないアプリケーションがあることに注意しなければならない。それとヘビーユーザーにしか影響はないが、PCを3日以上再起動もせずに使い続けていると、ブラウザの表示が異常に遅くなったり、ページが表示できなくなるという問題が発生することがある。その現象に陥ると、Internet ExplorerからFirefox/Opera/Safariなどにブラウザを換えても症状が変わらず無駄だった。本製品を一時的に無効にすると現象が収まるし、PCを再起動すれば直るとはいえ、ちょっと困ってしまう不具合だ。
総評
3000~4000円程度で購入でき、更新料が2017年4月まで無料で使えるというのは、これまでセキュリティ対策をまったく行なっていなかった人たちが導入するきっかけとなったことは間違いない。そういう面で本製品の存在意義は大きいだろう。迷惑メール対策機能もあり、指定した言語をすべて一括処理(英文メールは全て迷惑メールとして処理するなど)できるなど設定も簡単で便利だ。フィッシング対策機能もあり、低価格なのに本製品だけでセキュリティ対策をすべてできるというのは大きい。
ただし、ウイルス検出率が競合他社製品と比べて劣り気味であることと、ネットワークまわりに不具合があるため、運用するユーザー側に多少負担が掛かってくるのは問題だ。まあ、それを納得した上で使うのであれば非常にお買い得な製品であることは間違いない。また不具合が影響しそうもないライトユーザーやセカンドマシンには選択肢として悪くない製品といえるんじゃないかな。
Microsoftが無料のウイルス対策製品「Microsoft Security Essentials」を出したので、そちらを使うのがよさそう。Windows7の「Microsoft Security Essentialsでウイルス対策」と「無料のファイアウォールを導入」もご覧になってみてください。