eBook用フォント
紙媒体の出版ではあまり気にする必要のないことが、電子出版になった途端に面倒ごとになるというケースもあります。電子出版はフォントのライセンスが別途契約が必要だとか電子出版用に追加ライセンスの購入が必要だとか。また、電子出版ではファイルサイズを○○MB以下にしてほしいといわれることもあります。フォントを埋め込むとファイルサイズが増大するわけで、使用するフォント数を絞らなければならなくなる場合もあるわけです。
電子出版を行なう際に、フォントのライセンスなどを調べて電子出版にそのまま使えるものを調べたときの情報です。弱小出版社でコストには非常にシビアにならないといけないので、高いものはデフォルトでNG。できるだけ出費を抑えて電子出版に望みました。ちなみに、電子出版で販売を開始した2004年の最初の月は増刊8種合計で50冊も売れなかったらしいので、電子出版を始めるにあたって別途ライセンス料が発生するようなフォントを避けたのは大正解でした。というより、とうぶんは紙媒体と同じデータから作成するものでないと採算的に出せません。電子出版用の追加ライセンス購入なんか論外です……。
それと、自分の場合は『Adobe InDesign』で普段データを作成しているため、『InDesign』で使うことを前提に記述しています。うちのケースは、紙媒体と電子出版で共通のデータになるように作成していること、最終データの作成まで編集部内で完結している(自分が全部作っている)ことに注意してください。外注で作成してもらう場合はフォントのライセンスがまた異なるかもしれません。実際の製作者がライセンスを持っていれば出版社にはライセンスが不要、あるいは出版社も持っていないとダメなど、結構ライセンスが複雑(使用許諾の説明が難しい言いまわし多用していて理解しやすいといえないのもいただけない)&いろいろなケースがあるので。
※今ならばMORISAWA PASSPORTを使うのが手っ取り早いです。
AdobeのOpenTypeフォント
特に問題なく使えるフォントといえば、Adobeの製品に付属しているフォントでしょう。まず最初に候補となるのが『InDesign CS』に付属するフォントの「小塚ゴシック」「小塚明朝」と、かな書体「りょう」です。
- 小塚ゴシック Pro M/H
- 小塚ゴシック Std EL/L/R/M/B/H
- 小塚明朝 Pro L/M/B/H
- 小塚明朝 Std EL/L/R/M/B/H
- りょう Display Std M/SB/B/EB/H
- りょう Text Std EL/L/R/M
Adobe Storeで購入できる「平成OT Standard バリューパック」は19800円と比較的安価な割に使い出があるのではないでしょうか。Pro版にしかないような字を使わないようなジャンルの出版ならかなりお得かと思われます。購入手続きから3週間ほどで届きました。
- 平成角ゴシック Std W3/W5/W7/W9
- 平成丸ゴシック Std W4/W8
- 平成明朝 Std W3/W5/W7/W9
タイプラボのTrueTypeフォント
1書体3000円ほどと安価であり、利用可能範囲の自由度が高いフォントとして選択できます。Adobeのフォントだけでは不足するような文字デザインを補完する感じで使うとよさそうですね。会社に4書体ほど購入してもらいました。
- セプテンバーL
- あられ-TL
- キャパニト-M
- アニト-M-TL
注意すべき点は、丸数字などを機種依存文字とみなしてサポートせずに空白になっていること。OpenTypeでサポートされている文字ぐらいは実装してほしいのですけどね。運用面では欠けて空白になってしまうような文字は、合成フォント機能を利用して同じぐらいの太さの小塚系フォントと組み合わせる感じで使います。ただ、合成フォントを使うと稀にPDFに書き出せなくなるInDesignのバグっぽい現象に遭遇することがあるので、少々使い勝手が微妙なぁ?
サイトからダウンロード可能な無料フォント
インターネットで配布されているフォントはいろいろありますが、その中でも(調査時点での使用許諾では)使用してもよいというものに絞り込んでみました。癖がある手書き系が多いため、おそらく利用できるシーンが限られます。扱っている記事内容の雰囲気に合えば最高(最強)ですが、癖が強いフォントゆえにイメージが記事と一致することは少なくて利用シーンがあまり多くなさそうです。
一応、「フォントを使用したことを誌面に掲載すること」という広告掲載的な要求をしているフォントは外しているはずですが、ライセンスを読んだ時点での条件のため、その後条件が変化しているかもしれません。商利用で使う場合は再確認は必須。連絡を取って確認しましょう。雑誌とかだと本来なら数万~百数十万の広告掲載料金が発生するような広告掲載をタダでやってほしいと要求されているケース(使ったフォント名をどこかに掲載せよ)だと、市販のフォントより激しく高くつくライセンスといえます。場合によってはモリサワなどよりもはるかに高いフォント代になることを覚悟しなければなりません。経理を説得できるのかといわれると、自分にはムリっぽいのでそういうフォントは最初から諦めモードでした。
ここで紹介してはいますが、これらの無料フォントを使いたくなる雰囲気の記事作成に当たったことがないので今のところ自分は未使用。スケジュールに全然余裕が与えられていない自分のケースでは、ライセンスよりも、紙媒体でのPostScript出力時にうまくいくかわからないので、安全重視で避けてしまっているというのがあるかもしれません。ちゃんと出るのかどうか実績を知らないと怖くて。Y.OzFontは結構好みなので使ってみたい気がするんですけどねぇ。
追加ライセンスが必要なフォント
使いたくても電子出版では追加ライセンスが発生するから使用できないという諦めになったフォントもあります。予算がもらえるのであれば契約するのもありでしょう。紙媒体はヒラギノ角ゴシック、電子出版は平成角ゴシックに置き換えをした時期もありました。
ヒラギノ系フォント
使いたいけど使えないフォントに「ヒラギノ系」があります。Mac OSXだとデフォルトで入っているもの。これは電子出版だと1書体ごとに17000円の別契約が必要です。読みやすいきれいなフォントだからそのうち契約するように会社に要請したいのですが……今の電子出版の市場規模では当分のあいだ無理そう。
※これもMORISAWA PASSPORTで使えるようになりました。